外の壁⁉ <再登場:大腿筋膜張筋からの腸脛靭帯> ③
早いもので、もう年の瀬です。
COVID君に振り回され、大変な1年でしたが……。
来年こそは落ち着いて、食事や旅行等、ゆっくりと楽しみたいですね。
今回も引き続き、『腸脛靭帯』です。
今回は『腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)』の役割について触れたいと思います。
前回も触れたとおり『腸脛靭帯』は、筋膜が厚く重なった組織で、筋肉組織ではありませんので、
『腸脛靭帯』が直接脚を動かすことはありません。
でも、身体にとって大事な役割を持つ組織です。
それは、片足立ちや、歩行時など、片脚で体重を支えないといけない時に、その力を発揮します。
片脚で体重を支えている時、体重が下肢を内側にくぼませる力として加わります。(上図左)
『腸脛靭帯』は、この力に拮抗するように、大腿筋膜張筋や中殿筋、大殿筋から発生される力を、
膝下に至る長い距離を伝達して外側を牽引し、下肢を安定させる役割を果たしています。
走ったり、ジャンプをした時などは、かなり大きな負荷がかかりますが、それでも『腸脛靭帯』
は、外側の牽引-安定器として黙々と働いているのです。
もし『腸脛靭帯』が存在していなかったら、人間の膝関節や足関節は、確実に今の形態とは違い、
2-3倍くらいの大きさがないと、体重を支えられなかったのではないかと思います。
モデルはもちろん、オリンピック競技もなかったでしょうね。
ところで股関節症では、この『腸脛靭帯』を中心とする脚の外側は、硬くなりやすい部位です。
患側はもとより、患側をかばう健側でも硬さがみられます。
ストレッチポールや棒、テニスボールを使ったり、手で叩いてしっかり解しましょう。
『腸脛靭帯』は、筋肉組織ではないですが、下肢を支えるには欠かせない組織なのです。
【One Point】
ランニングや自転車走行など、繰り返される膝の屈伸運動で、膝の外側に痛みが起こる、
“腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)”という疾患があります。
これは、大腿骨の膝外の骨と、『腸脛靭帯』が摩擦により、局所的な炎症を起こすこと
により起こります。