なぜ “筋肉” なのか?
あけましておめでとうございます。
2020年はどのような年になるでしょうか?
皆様にとって、より良い年となりますことを祈念いたします。
今回は、新年の初めということで、もう一度「なぜ我々が筋肉を治療のターゲットにしているか」に
ついて、お話したいと思います。
人間の身体には、約200個以上の骨があります。
これらはどれ一つ、耳の中の小さな小さな耳小骨1つとっても、全て無駄なものは一つもなく、人体
にとり必要不可欠なものです。
また、人間の身体には、約600を超える筋肉があります。
手足の筋のように自分の意志で動かせる “(随意筋)骨格筋”・内臓のように自分の意志では動かせな
い“(不随意筋)平滑筋”・そして心臓を動かす “心筋”です。
これらの筋肉も、どれ一つとっても無駄なものはなく、人体の各所各所において必要不可欠なもので
あることは言うまでもありません。
これらの骨と筋肉が巧みに組み合わさり、身体各部に関節や組織を形成し、そこに神経系がその動き
を制御することにより、人間には様々な動きが生まれ、様々な活動をし、生活がなされます。
このような精密機械のような人間の身体に起こったわずかな骨の歪、その一つが<臼蓋形成不全>です。
【変形性股関節症】の原因は種々ありますが、約80%の原因は、発育性股関節症(股関節脱臼)の後遺
症や、股関節の形成不全といった発育障害の後遺症が主なもので、股関節における骨盤側の骨(臼蓋)
の形成が不十分(かぶりが浅い)な状態が、<臼蓋形成不全>です。
形成が不十分とはいっても、わずかな骨の形成の違いで、「痛み」と「機能障害」を主症状とする【変形
性股関節症】が発症してしまいます。
しかし、成人になる前には既にこの臼蓋の骨の形成不全が存在しているのですが、個人差はありますが、
多くの人はこの時点では、「痛み」や「機能障害」といった症状は出現していません。
この時点では、骨に問題があっても、症状は出ないのです。
それは、柔軟な筋肉が、骨の問題を抱えた関節を十分にカバーしているからなのです。
ではなぜ、筋肉は柔軟さを失ってしまうのでしょうか。
それは、股関節という関節部は、体重を支える『荷重関節』だからです。
人間としての進化の成果である二足歩行は、股関節に過大な負担を与える結果となってしまいました。
特に股関節は、広い可動性を持つ “球関節” で、かつ、歩いたり・走ったり・飛んだり・重いものを持
ったりと、絶えず体重を支え、時には体重をはるかに超える負荷に耐えその機能を果たしています。
荷重関節の中のわずかに起こった “骨の歪” は、それを支持し保護しようとする筋肉に、時間をかけて
ダメージを与えます。
この筋肉が受けたダメージの蓄積で、筋肉は柔軟性を失っていきます。
柔軟性を失った筋肉では、関節にかかる圧力を吸収したり、分散したり、広い可動性を生み出すことが
困難になっていきます。
その結果、関節内組織により大きな力がかかることで、炎症や軟骨の変性が起こり始めます。
“「痛み」と「機能障害」を主症状とする”、と定義される【変形性股関節症】は、教科書には書いてあ
りませんが、必ず先発症状としてこの「筋障害」があるのです。
これは、【変形性股関節症】としては、見落としてはいけない重要な疾患の要素なのです。
ですから、我々は股関節症の方は勿論、術後の方でも筋肉にこだわり治療を行うのです!
筋肉は、一つの関節を動かすだけでなく、筋膜という “膜” を纏い、全身でネットワークを築いている、
とても賢く神秘的な組織なのです。
この先はまたいつかお話したいと思います。
(富士山からの日の出)