鼠径部は悩みの種⁉ <腸腰筋> - ③ –
穏やかなお正月でしたが、雨が降らず空気が乾燥していますね。
加湿器等を上手に使い、喉やお肌の “保湿” に心がけましょう。
前回は、『腸腰筋』の柔軟性が失われる背景についてお話ししましたが、今回は、そのことが “ 歩行 ”
に与える影響について触れたいと思います。
その前に、【歩行】について簡単に予備知識を。
人が歩く時は、一側の足の踵をついて、体重がかかり、つま先で蹴って前に進み、今度は反対側の足
の踵がついて……の動作を繰り返し行っています。
そしてそれは、下の図のように、大まかなサイクル(相)に分けられます。
このサイクルの中で、「腸腰筋からみた股関節」のポイントになる所が、2か所あります。
1つ目は、体重が一番かかった状態から、つま先で蹴る動作まで。 と、
2つ目は、そこから前に足を出す時。 です。
1つ目の動作の時「股関節」は、後ろに反る(伸展;しんてん)状態になり、<筋の柔軟性>が求め
られます。
2つ目の動作の時「股関節」は、前に曲がる(屈曲;くっきょく)をする状態で、<筋の力>が求め
られます。
まず、<筋の柔軟性>が求められる、1つ目の状態についてみてみましょう。
歩行中で、体重が一番かかり、つま先で蹴り出す動きの状態までに、「股関節」が後ろに反る、伸展
という動きが見られます。
正常な歩行では、その際の「股関節」の進展角度は、約 20° とされています。
(最低でも 10° は、必要とされます。)
この角度は、股関節の関節包や靭帯、そして、『腸腰筋』の柔軟性が作り出しています。
しかし、前回もお話ししたように、股関節症の状態ですと、これらの組織の柔軟性が損なわれます。
当然この状態では、本来の “ 一歩 ” の歩幅が出せなくなってしまい、歩く速さにも影響が出てきます。
この状態を、あまり目立たないように…と、本来の役割の代わりをする、“ 代償(だいしょう) ”する
歩行が生まれます。
これを、“ 代償歩行(だいしょうほこう)”と言いますが、いくつか例を挙げてみましょう。
【小股で歩く】:伸展する動きが出ない分、一歩が短くなり、速さが遅くなるため、回転数で代償する。
いわゆる、ちょこちょこ歩きとなり、股関節よりも膝から下を早く動かして歩きます。
両側の股関節の伸展が悪い時によく見られます。
【お尻を後ろに引く】:伸展する動きをカバーしようと、お尻を後ろに引いて(腰を後ろに回転させて)
偽の伸展の動きを作り、歩幅を稼ぎます。
この代償がある方は、両手をお尻に当てて歩いてみるとよくわかります。
【伸びあがり】:足を蹴って前に進む時、普通は足の親指で前に蹴りますが、この時、つま先に全体重
を乗せ、つま先立ちのようになって、蹴り出します。
これは、足りない股関節の伸展の動きと、短い歩幅を、主に “ ふくらはぎ ” の筋(下腿三頭筋)の
力を使って代償する歩き方です。
この代償をされる方は、ふくらはぎが太く、足首を上に挙げる背屈という動きが硬くなります。
代償歩行は、本来の能力を他で補っているわけですから、補っている部分には、当然負担がかかります。
その負担は、歪みや痛みになって表れやすくなります。
ですから、可能な限り、本来の機能を使って動くことが大事になります。
次回は、<筋の力>が求められる、もう一つの歩行の状態について触れたいと思います。