『一過性股関節関節包(内)炎』 -その2-
左の図は、「正常な股関節」と「臼蓋形成不全の股関節」の断面図です。
正常股関節では、安定した関節環境下で、関節内にかかる圧を分散しながら、かつ周りの関節包や靭帯の
補強を受け、周りの筋肉がさらなる関節の安定や、関節の円滑な運動を行うために働いています。
また、右の図で “関節包” の内側(矢印)に、“滑膜” という組織があり、ここで「滑液=関節液」が作ら
れます。
この関節液で、関節軟骨は栄養を受け、関節を保護し老廃物の除去も行われます。
一方、臼蓋形成不全の状態の股関節では、関節における支持基盤が小さいため、関節内で狭い範囲に大き
な負荷がかかります。
また、荷重を常に受ける股関節では、支持の弱い方向へ(矢印)どうしても負担が大きくなります。
これを、周りの関節包や靭帯・筋肉は、大腿骨頭を関節内に留め、かつ円滑な動きを行うため懸命に通常
の何倍もの仕事を常に行っています。
臼蓋形成不全の状態ではありますが、関節包・靭帯・筋肉等の軟部組織が十分に “対応可能な状態” の内
は、痛みは起こりません。
骨に問題があるからと言って、即座に痛みが起こる訳ではありません。
もし、軟骨も脆弱な組織だとしたら、活動性のより高い若い時期(20代)にはその変性を来し、滑膜を
刺激し痛みを作り出し、より進んだ骨の変形を起こすはずです。
しかし、一般的な症状発症年齢は、40~50代です。
骨に問題があっても、本来関節はその機能を十分に果たす能力はあるのです。 特に筋肉には!
ただ、軟部組織には、さすがに何もしないで正常の何倍もの負荷を何十年と耐える能力はありません。
柔軟性をなくし硬くなってきた筋肉では、関節を保護する能力が極端に低下します。
その影響を関節包はダイレクトに受け、滑液=関節液を産出する滑膜の能力も確実に低下します。
質の低下した関節液は、荷重の圧力の負荷以上に関節軟骨にダメージを与え、「炎症」を起こします。
「炎症」による痛み(刺激)は、股関節周囲筋をさらに硬くし、関節環境を一段と悪化させ、骨へと
影響を与えていきます。
そう、この病気の正体はこの「関節包内の炎症」なんです。
骨に問題があっても、決して骨が主役の病気ではないのです。
股関節に違和感を感じたり、常時ではないけれど痛みが出始めた時整形外科を受診しても、「今は
大丈夫だけどこの先もっと痛くなったらもう一度来なさい。」なんてDr.に言われました。……
という話をよく聞きます。
これは、<変形性股関節症>という病気が、骨の変形が進行することを前提にした答えなんですね。
でも、「炎症」が主体ですから、もっともっとこの時期に打つ手はあるんです。
お肌のように、若い筋肉を取り戻すこと! 硬さを出す前の筋肉に、その答えはあるんです!
=お知らせ=
※ 2018年6月17日(日)午後1時から、さいたま赤十字病院の整形外科医である石井研史先生による講演会を行います。
*会場:銀座2丁目『メルサ』の入る銀座貿易ビル6階「リロの会議室 銀座中央通り」
*定員:70名
*会費:1,500円
講演後、質疑応答の時間もありますので、病気や治療、手術についてなど不安に思うこと等ありましたら、この機会を
利用されてはいかがですか?
ご希望の方は、スタッフまたはホームページからお申し込みください。